yuma's LOG

なんでも書いちゃう雑記ブログ!

知っている?漫画の著作権問題、自炊代行訴訟。キンコン西野の絵本問題だけじゃない。

こんにちは、裕真です。

 

昨日、書いた「絵本無料化で話題のキンコン西野のブログを読んでみて思ったこと」がありがたいことに多くの方に読んでもらえたので関連したことを書きたいと思います。

 

「自炊代行訴訟」

 

聞いたことがあるでしょうか?

出版業会における自炊代行問題。そして、業界関係者が起こした訴訟とその結果。

 

著作権をめぐる1つの大きな事件なので知っておいた方が良いでしょう。

 

自炊代行とは?

わかっているとは思いますが、出版業界における自炊代行とは食事を作ってもらうサービスのことではありません。

 

この場合の自炊とは「書籍(漫画や小説、雑誌など)をスキャナーで読み取って電子データ化する」ことを言います。

 

書籍が増えすぎてしまうと、紙媒体では保管場所に困ってしまうので電子データ化して保管しようということから生まれた行為です。

キンコン西野の記事では、絵本は紙媒体に価値(無料ではなくお金を出して買う特別な機能)がありましたが、自炊される本というのは紙媒体でなくても良いもの、ということになります。

 

自炊は何の問題もありません。

 

自炊も紙媒体の書籍を電子データにしている=複製していますが、「自分で購入した書籍を、自分が電子データとして使うために、自分の手で裁断してスキャン」しています。

 

この場合、著作権法上は私的複製になり、例外として認められています。買ってきたCDをiphoneなどに入れて持ち歩くのと同じ意味合いです。

 

では自炊代行とは何か?

 

「自炊代行とは自炊を代行してくれる業者です」

 

いや、そのまんまです。

自炊をするためには最後に紹介しますが読み取り用のスキャナーが必要です。また時間も手間もかかって面倒くさいです。

 

なので登場したのが自炊代行業者。

依頼して本を送るだけで電子データ化してくれます。※原本の紙媒体は基本的に廃棄

 

これは便利だ、ということですぐに広まり人気に火がつきました。

 

自炊代行の問題

では、この自炊代行の何が問題だったのか。

 

それは「自炊代行業者が裁断してスキャンして電子データ化する」ことが"私的複製"にあたるのかどうか、という点です。

 

紙媒体から電子データ化しているので確実に複製は行われています。

この複製が著作権法上、例外的に許可されている私的複製に当たるのであれば合法、私的複製に当たらないのであれば違法、となります。

 

自炊代行業者としては以下のような考え方です。

 

「お客様(本の持ち主)から預かって電子データ化する手伝いをしている、あるいは代わりに複製しているのであって主体者はお客様。」

「つまり、誰が複製しているかというと本の持ち主であり、私的複製の範疇である」

 

あくまでサポートしているだけであり、私的複製であるから著作権法で認められている範囲。料金はサポートしたことによる手数料で複製したデータの販売で稼いでいるわけではない。

 

確かに一理ある考え方とも言えます。

 

ただし、これに対して書籍の著作権者が異議を唱えたことにより訴訟に発展しました。

 

自炊代行訴訟と判決結果

この自炊代行問題に訴訟を起こしたのは書籍を出している複数名の著者です。

 

原告団としては、直木賞作家の浅田次郎さんやミステリー小説作家で有名な東野圭吾さんらを中心とした7人です。自炊代行を違法であるとしてやめるよう訴訟を起こしました。

 

ただし、関わっている?賛同している?著者の方はさらに多く122人いるらしいです。公式のサイトではなく以下のブログに記載されていました。

 

自炊代行に反対の作家さんたちjisuiheaven.wordpress.com

 

 

裁判の詳細についてはこちら。

 

 

 

裁判記録は読めばなんとか理解することができますが、表現などとても読みにくく時間がかかるので重要なところだけ。

 

控訴人ドライバレッジによる複製行為の有無(争点1-1)について 「著作者は,その著作物を複製する権利を専有する。」(著作権法21 条)ところ,「複製」とは,著作物を「印刷,写真,複写,録音,録画その 他の方法により有形的に再製すること」である(同法2条1項15号)。そ して,複製行為の主体とは,複製の意思をもって自ら複製行為を行う者をいうと解される。

 

 

本件サービスは,前記1 控訴人ドライバ

レッジに書籍の電子ファイル化を申し込む,2利用者は,控訴人ドライバレ ッジに書籍を送付する,3控訴人ドライバレッジは,書籍をスキャンしやす いように裁断する,4控訴人ドライバレッジは,裁断した書籍を控訴人ドラ イバレッジが管理するスキャナーで読み込み電子ファイル化する,5完成した電子ファイルを利用者がインターネットにより電子ファイルのままダウンロードするか又はDVD等の媒体に記録されたものとして受領するという一 連の経過をたどるものであるが, スキャナーで読み込み電子ファイル化する行為が,本件サービスにおいて著作物で ある書籍について有形的再製をする行為,すなわち「複製」行為に当たることは明らかであって,この行為は,本件サービスを運営する控訴人ドライバ レッジのみが専ら業務として行っており,利用者は同行為には全く関与していない。

 

そして,控訴人ドライバレッジは,独立した事業者として,営利を目的と して本件サービスの内容を自ら決定し,スキャン複製に必要な機器及び事務 所を準備・確保した上で,インターネットで宣伝広告を行うことにより不特 定多数の一般顧客である利用者を誘引し,その管理・支配の下で,利用者か ら送付された書籍を裁断し,スキャナで読み込んで電子ファイルを作成する ことにより書籍を複製し,当該電子ファイルの検品を行って利用者に納品し, 利用者から対価を得る本件サービスを行っている。

 

そうすると,控訴人ドライバレッジは,利用者と対等な契約主体であり, 営利を目的とする独立した事業主体として,本件サービスにおける複製行為 を行っているのであるから,本件サービスにおける複製行為の主体であると 認めるのが相当である。

 

引用元:www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/579/084579_hanrei.pdf

 

重要なのは最後の部分、控訴人(=自炊代行業者)に対して「複製行為の主体であると 認めるのが相当」としています。

 

複製行為に関して利用者が全く関わっていないことから、また営利目的のサービス提供ということからも代行業者が複製行為の主体との判断。

 

複製行為が代行業者 = 私的複製ではない

 

ということから、自炊代行は厳しい状況に追い込まれることになりました。

 

 

現在は?

では、この自炊代行訴訟によって自炊代行業者はいなくなったのか、というとそうではありません。検索すれば出てきますが現在も自炊代行を提供している自炊代行業者はあります。一例としてBOOKSCAN(ブックスキャン)があります。

 

www.bookscan.co.jp

 

 

「え?」

 

と思ったかもしれませんが違法なままやっているわけではありませんので安心してください。訴訟の影響を受けて?かどうかはわかりませんがしっかりと訴訟で問題となった部分は解消されています。

 

スキャンについて

9.スキャナーのスタート/ストップボタンは、BOOKSCAN SWITCH(Android版/iOS版)で操作することができます。BOOKSCANのスタッフがスキャナーのスタートボタンを代理で押すことはできませんのでご了承ください。

 

BOOKSCAN(ブックスキャン) 本・蔵書電子書籍化サービス - 大和印刷

 

複製に関わる全行程を代行業者がやると複製の主体が代行業者となるため、一番重要なスキャンの開始を利用者にやってもらうということです。

 

これなら複製の主体者を利用者とし、私的複製と言えなくもない。とりあえず訴訟の判決とは異なり代行業者を複製の主体者とは言えなくなりました。

 

ただし、今後はどうなるのかわからないので電子書籍化を依頼したい場合は早めに依頼する方が良いでしょう。

 

まとめ

出版業界における著作権問題として自炊代行訴訟を紹介しました。

 

著作権の問題としてはwelqやnaverの問題があり、今が旬とも言っていい話題ですね。あれはインターネット上の問題ですが著作権が問題となっている点は同じです。合わせて自炊代行問題についても覚えておきましょう。

 

キンコン西野の絵本問題とは少し違いますが、出版業界を取り巻く問題の1つとしてご紹介しました。

 

 

最後に自炊についてですが以下の2つを理解しておきましょう。

・現在も利用できる自炊代行業者は存在している

・自分でスキャンして自分で利用するのは問題ない

 

書籍をスキャンするには富士通scansnapがおすすめです。

以下の機種であれば50枚ごとにスキャンすることができるのでだいぶ手間を省くことができます。

 

 本を裁断せずにスキャンしたいという人向けの製品も販売されています。

こちらは1ページ(見開き2ページ)ずつスキャンしていくので時間はかかりますが原本も残したいという人におすすめです。